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今日から使える!弁護士のためのITツール活用
法律業務におけるIT化の動向
法律業務におけるIT化は、今や避けて通れない課題となっています。2022年5月に成立した改正民事訴訟法により、弁護士が代理人となる事件では、訴状や証拠の提出をオンラインで行うことが義務化されました。さらに、民事裁判書類電子提出システム「mints」は2023年11月から全国の地方裁判所で運用を開始されています。このシステムが広く浸透すれば、訴訟の最初から最後まで「紙に一切触れずに進行する」時代も、そう遠くはないでしょう。
弁護士業務の電子化は、業務効率と生産性の向上をもたらします。書類のやり取りにかかる時間の削減や、裁判期日までの準備作業の迅速化がその例です。一方で、オンライン手続きには、システム操作や情報管理といったITリテラシーが必須となります。情報セキュリティの確保も重要な課題ですが、これをクリアできれば、場所を選ばない業務遂行や効率的なコミュニケーションといった大きなメリットが得られます。
弁護士の方々は既にAIによる契約書レビューなどの専門的なITツールを活用されているかもしれません。これに加えて、「汎用的なITツール」の導入・活用により、実務をさらに効率化できる可能性があります。本記事では、チームでのタスク管理、事実関係の整理、オンライン会議の議事録作成など、弁護士業務全般をサポートするITツールの具体例をご紹介します。
1. チームでのタスク管理
弁護士は多くの場合、複数の案件を同時進行する必要があります。10~20件もの案件を一度に抱えることも珍しくありません。また、パートナーやアソシエイト、事務局などのチームで協力して進める場面も多く、「誰が」「いつまでに」「どの案件を」担当しているのかを明確にすることは、業務の円滑化に不可欠です。
Trelloの活用例
代表的なプロジェクト管理ツールであるTrelloは、カードをボード上で移動させるシンプルなUIが特徴で、弁護士業務にも適しています。例えば、A社から業務委託契約書のレビュー依頼があった場合:
- 佐藤さんが1stレビューを担当
- 「作業中(佐藤)」というリスト(またはカラム)にカードを追加
- 期限を設定し、関連書類を添付
- 佐藤さんによるレビューが完了
- カードを「作業中(田中)」に移動し、パートナー(田中)の確認を待つ
- 田中さんによる最終確認
- 田中さんがレビュー完了後、「依頼者提出済み」のリストへカードを移動
これにより、チーム全員が案件の進捗や担当者を一目で把握できます。タスクの見落としや期限切れを防ぐとともに、コミュニケーションロスも低減できます。
2. 事実関係の整理
弁護士にとって、事実の確認や資料の整理、関係性の把握は重要な業務です。従来のホワイトボードや付箋を使用する方法に代えて、デジタルツールを活用することで、資料をオンラインで共有・更新でき、物理的な制約から解放されます。また、複数拠点での共同作業もスムーズに進められます。
Miroの活用例
Miroは直感的な操作が可能なオンラインホワイトボードツールで、多人数同時編集に優れています。訴訟案件の事実関係を整理する際には:
- 関係者の名前や役割
- 事件の経緯をタイムライン形式で表示
- 矢印や図形を用いた関係性の可視化
を行うことで、事実関係を一枚のボードに集約して把握できます。ボードの拡大・縮小機能により、複雑な案件でも整理しやすくなります。
3. 文字起こしと議事録作成ツール
Microsoft TeamsやZoomなどのオンライン会議ツールを使用した打ち合わせは、弁護士事務所でも標準的になりました。議事録を正確かつ効率的に作成し、後から内容を検索・参照できる状態に保つことは、案件の進行管理において極めて重要です。
Microsoft Teamsの文字起こし機能
Microsoft Teamsには、会議の自動文字起こし機能が備わっています。会議終了後にテキストデータとして内容を確認できるため、リアルタイムでのメモ取りの負担が軽減され、発言の記録ミスも防げます。機能を有効にするだけで議事録の下地が自動生成される点は、大きな利点です。
ChatGPTの議事録作成支援
議事録をより簡潔かつ要点を押さえた形でまとめたい場合、ChatGPTなどのAIツールが活用できます。例えば、Teamsの文字起こしデータをコピーし、次のようなプロンプトをChatGPTに入力することで、要点を短時間で整理できます。
以下の会議録音の文字起こしデータから、重要なポイントを抽出し、要約してください。特に、クライアントAとの契約書に関する議論と、次回の打ち合わせ日程についての部分を詳しくまとめてください。
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(文字起こしをコピー&ペースト)
このようにChatGPTを活用することで、コストを抑えながら議事録の作成や要点整理を効率的に行えます。
まとめ
改正民事訴訟法や「mints」をはじめとするオンライン手続きの普及により、弁護士業務でもIT化が加速しています。ITツールの活用は、業務効率の向上だけでなく、クライアントへのより迅速・的確な対応を実現するためにも不可欠です。
専門的なAI契約書レビューに加え、本稿で紹介した汎用的なタスク管理ツール、オンラインホワイトボード、議事録作成支援ツールなどを組み合わせることで、業務全体の生産性向上が期待できます。これらのツールを効果的に取り入れ、今後ますます多様化する弁護士業務に対応していきましょう。