法律業務におけるIT化の動向...
「3つのe」とmintsで進化する民事訴訟手続のIT化最前線
2017年10月に始まった「裁判手続等のIT化検討会」は、翌年3月に「裁判手続等のIT化に向けた取組み―『3つのe』の実現に向けて―」を発表しました。この報告書では、将来的な法改正を前提として、民事訴訟制度を支えるITシステムを「3つのe」というサブシステムに分けて構築する考え方が示されています。ここで示された「3つのe」には、e事件管理、e提出、e法廷という要素が含まれます。
なお、本ブログでは合わせてmints(民事裁判書類電子提出システム)を学習させたAI botを試用できる旨を紹介していますので、興味のある方はそちらも参考にしてみてください。
💡 mintsのことを学習させたAI botを作成しましたので、こちらからお試しください。
3つのeとは?
「3つのe」は以下のように構成されています:
- e事件管理: 事件に関する情報を一元的に管理し、関係者が情報を共有できるシステムです。これにより、事件の進行がスムーズになり、当事者も即時に状況を把握でき、透明性が向上します。
- e提出: 書類の提出や保管にかかるコストを削減し、データとして保存することで検索や再利用が容易になります。準備書面の作成時に相手方の書面を簡単に参照できるようになります。
- e法廷: 裁判所への移動コストや時間を削減し、短時間の期日でも効率的にスケジュールを組むことができます。
3つのフェーズ
「3つのe」を実現するための計画は段階的に進められています。
- フェーズ1: 現行法のもとでウェブ会議システムを活用した争点整理手続のe法廷。
- フェーズ2: 法改正を経て、口頭弁論期日等のe法廷。
- フェーズ3: システム構築が必要なe事件管理とe提出。
フェーズ3の先行実施とmints
フェーズ3の本格導入に先立ち、まず準備書面や書証のオンライン提出を先行して実施することが決まりました。この措置を支えるシステムとして、裁判所がmints(民事裁判書類電子提出システム)を構築し、提供しています。mintsは現行の民事訴訟法第132条の10に基づき設置され、2023年11月28日から全国の地方裁判所支部で運用が開始されました。これによって、準備書面や書証の写しなどをオンラインで提出することが可能になります。
mintsの利用方法
アカウント作成&設定
mintsを利用するためには、まずは裁判所職員から利用者登録のための招待メールを受信する必要があります。初めて利用する当事者は、サインアップ(利用者登録)し、アカウントを作成します。また、ユーザが補助者を指定したい場合は、補助者ユーザ側でもサインアップが完了した後で、親ユーザ(当事者ユーザ)のアカウント設定画面から補助者ユーザのIDを登録する仕組みが用意されています。1人の親ユーザは最大5つまで補助者ユーザを設定できますが、同一の補助者ユーザを複数の親ユーザが共有することはできません。
招待メールの受信:
- 裁判所職員から利用者登録のための招待メールが送信されます。初めて利用する場合は、サインアップ(利用者登録)が必要です。
補助者ユーザの設定:
- 当事者ユーザは他の当事者ユーザを補助者として設定できます。補助者ユーザのサインアップが完了後、親ユーザがアカウント設定で補助者ユーザのIDを登録する必要があります。1人の親ユーザは補助者ユーザのIDを5つまで設定できますが、同一の補助者ユーザを複数の親ユーザが設定することはできません。
ファイルのアップロード
- 提出書面の種別選択:
- 提出する書面の種別(提出期限の定められた書面/提出期限のない書面)を選択し、ファイルをアップロードします。
- アップロード時の留意点:
- パスワード付きのファイルはアップロードできません。ファイル名は50文字以内に設定し、使用できない文字が含まれている場合は修正が必要です。
- 1回のアップロードで最大50MBまでのファイルを扱えます。
- アップロード画面にあらかじめ用意されているタブ:
- 主張書面
- 書証の写し
- 証拠説明書
- 雑事件申立書
- その他の書面
- 参考書面(Word、Excel、またはPDFであるファイルのみアップロード可能、訴訟記録にはならない)
- アップロード時のルール:
- 1つの書面(添付される図表等を含む)を1つのファイルとしてアップロードしてください。枝番がある書証については、全体を1つのファイルとしてアップロードすることができます(例: 「第1準備書面」、「甲01」、「甲02-1〜甲02-5」)。
- 書証番号は2桁または3桁(例: 「01」等から始まる数字)で表記することを推奨します(例: 「準備書面1」「甲01」「乙10」「証拠説明書1」)。
最後に
mints(民事裁判書類電子提出システム)は、日本における司法手続のIT化を大きく推進する重要なステップです。書類のオンライン提出や事件管理の一元化、e法廷の活用により、裁判の進行がスムーズになり、当事者や弁護士の負担が軽減されることが期待されています。こうしたIT化の取り組みは、時間やコストの削減だけでなく、裁判手続全体の透明性向上にも寄与すると考えられます。今後もさらにシステムが整備・拡充されることで、より効率的な裁判手続が実現していくでしょう。