法律業務におけるIT化の動向...
音声活用の新時代:PLAUDとtl;dvの機能とその裏側
最近話題の「PLAUD」とは?
最近、弁護士の方々との会話で「PLAUD」の使用についてよく耳にするようになりました。PLAUDは法律実務における音声データの管理と活用を革新する、AI搭載のボイスレコーダーです。弁護士業務では、法的文書や判例など専門性の高い情報を正確に記録・管理することが不可欠です。PLAUDや本記事の後半でご紹介するtl;dvを活用することで、これらの情報を効率的に整理し、必要なときに素早く参照できます。まずは、PLAUDの詳細をご紹介します。
PLAUDの主な機能
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音声録音とテキスト化
PLAUDはAIを搭載したボイスレコーダーで、録音した音声を自動的にテキスト化します。会議や打ち合わせの内容を効率的に記録・管理できます。
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要約機能
テキスト化されたデータはGPT-4oを用いて要約され、重要なポイントを迅速に把握できます。長時間の会議内容を短時間でレビューすることが可能です。
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デバイスの種類
- PLAUD NOTE
クレジットカードサイズの極薄デバイスで、携帯性に優れています。ポケットやバッグに簡単に収納でき、いつでもどこでも録音が可能です。 - PLAUD NotePin
衣服に装着できるピンマイク型のウェアラブルデバイスで、手ぶらでの録音が可能です。動きの多い現場や、手を使えない状況でも音声をキャプチャできます。
- PLAUD NOTE
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音声データの処理
音声データの文字起こしはOpenAIのWhisperを使用し、その後GPT-4でテキストを要約します。このプロセスにより、高精度な文字起こしと効果的な要約が実現します。
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料金体系
本体価格に加えて、文字起こし量に応じた月額料金が発生します。
音声データの文字起こしと要約機能は、さまざまな場面で効果的に活用できます。医療現場では、患者の同意のもと診察内容を録音し、説明や質疑応答を文字化した上で、要約を患者に提供することが可能です。これにより、医師と患者の信頼関係が深まり、より質の高い医療の提供につながると期待されています。PLAUDは、電話での会話が多い方や、対面での業務が中心の方にとって特に有用なツールといえます。一方で、主にウェブ会議を使用する場合は活用機会が限られる可能性があります。また、多人数が参加する場合は、どうしても話者識別の精度が低下することがあります。
ウェブ会議主体の業務におすすめの「tl;dv」
Web会議が主体の場合、Microsoft Teams、Zoom、Google Meetなどのウェブ会議システムには同様の機能が標準搭載されていることが多いため、それらの機能を活用することをお勧めします。ただし、実際の運用で課題となるのが、相手先が使用している(または使用可能な)サービスに合わせる必要が発生する点です。例えば、全員がTeamsを使用していれば、録音、文字起こし、Copilotによる要約という一連の流れを習得しやすく、多少の使いづらさがあっても定着するでしょう。しかし実際には、ある顧客はZoom、別の相手はGoogle Meetを使用するといったケースが頻繁にあり、結果として各ツールで録音したデータが散在してしまう状況が生じます。このような場合におすすめなのが「tl;dv」というサービスです。
tl;dvの主な特徴
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多様なウェブ会議プラットフォームとの連携
Microsoft Teams、Zoom、Google Meetなど、主要なウェブ会議システムと連携可能です。会議開始時にtl;dvを入室許可するだけで、自動的に録音・文字起こし・要約が行われます。
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参加者の識別と要約の可視化
画面右側には参加者名とtl;dvの表示があり、イメージとしては専任の書記係が会議に参加しているかのような感覚です。左側のNotesには会議内容の要約が自動生成され、各項目をクリックすると該当部分の映像にジャンプできます。
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無料プランの提供
無料プランでも主要な機能が利用可能で、データは6ヶ月間保存されます。気軽に試すことができ、業務に導入する前に機能を確認するのに適しています。
- 他社主催の会議での使用許可
自分が主催するウェブ会議ではtl;dvの入室を自分で許可できますが、他社主催の会議では主催者からの許可が必要です。録音録画の許諾を得るために、事前に一言確認しておくことをおすすめします。
PLAUDやtl;dvの裏側で活躍するWhisperについて知ろう
2022年11月のリリース以降、生成AIといえばChatGPTが注目を集めていますが、開発元のOpenAI社にはもう一つの重要な製品があります。それがWhisperです。Whisperは音声をテキストに変換する自動音声認識システムです。以下に、Whisperの主な特徴を説明します。
Whisperの特徴
- 膨大なデータで訓練
68万時間分の多言語・多タスクの音声データを基に訓練されています。この豊富で多様なデータにより、さまざまなアクセント、背景音、専門用語に対応できます。 - 多言語対応
複数の言語の認識・文字起こしに対応し、それらの言語から英語への翻訳も可能です。これにより、国際案件や多国籍クライアントとのコミュニケーションをスムーズに行えます。 - 高い適応力
豊富な訓練データにより、アクセントの違いや雑音の多い環境でも高精度な文字起こしを実現します。
PLAUDやtl;dvは、このWhisperを活用して文字起こしを行っています。Whisper自体には使いやすいUI/UXは備わっていませんが、そこにこそPLAUDやtl;dvを使う価値があるのです。
Whisperの動き方と自動要約の仕組み
このブログの読者の皆様には、ぜひその仕組みを理解した上で活用していただきたいと思います。そこで、Replicateというサイトで利用できる生のWhisperを使って、その処理の流れをご紹介します。下記の画面では、左側に2分ほどのMP4(動画)ファイルをアップロードし、右側でWhisperの処理状況を確認できます。
約1分で処理が完了し、文字起こしの結果が右下のtranscriptionに表示されます。ご覧のように、Whisperは音声を忠実に文字起こしするだけなので、生の出力結果だけでは読みづらい状態です。そこでGPTの出番となります。
PLAUDやtl;dvの環境に近づけるために、ChatGPTのGPT-4oを使って試してみましょう。以下の指示を与えた結果がこちらです。
以下の文字起こしを要約してください。
###文字起こしの原文
このように処理すると、格段に読みやすくなります。音声認識、文字起こし、自動要約機能の裏側では、これらの処理が行われています。今回はシンプルな指示をGPT-4oに与えましたが、この指示内容をカスタマイズすることで、さらなる改善が可能です。PLAUDでは物理ボタンで簡単に開始でき、tl;dvではトピックごとに該当箇所へジャンプできるなど、それぞれのツールに特徴的な機能が加わることで、より一層使いやすいものとなっています。
まとめ
本記事では、音声データの管理と活用を革新するツール「PLAUD」と「tl;dv」について解説しました。
両ツールはOpenAIのWhisperによる高精度な文字起こし機能を搭載し、音声データの管理・活用を効率化します。ユーザー事例や料金体系を踏まえて業務ニーズに合ったツールを選択することで、生産性と情報管理の質を向上させることができます。
今後、PLAUDとtl;dvに代表されるAI搭載ツールの活用は一層広がっていくでしょう。適切なツール選択と効果的な運用方法の習得が、あらゆる職種での業務効率化の鍵となります。この記事が皆様の業務改善の一助となれば幸いです。